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コラム
 
高齢者施設での医療介護連携について
社会福祉法人若竹大寿会
常務理事 医師 竹田雄馬 氏

 地域包括ケアシステムの中では、高齢者施設の役割について触れられているが、具体的な医療介護連携の形は示されていない(1)。
高齢者施設は複数の形態に分類されるが、保険制度の扱いや医療職の配置人員も施設により異なる。医師の診療頻度・時間は限られており、時間外は対応ができないことも多い。

 厚労省(2022)の報告では、後期高齢者は若年者と比較して、1人あたりの入院と外来の診療費・受診率ともに非常に高くなっている。特に入院では、後期高齢者100人当たり35件の入院が生じていて、1件あたりの平均在院日数は40日となっていて、入院1日あたりの医療費は34,073円となっている(2)。

 横浜市(2019)では、施設からの救急搬送は年々増加していて、全高齢者の救急搬送の10%程度で推移している(3)。竹本ら(2017)の報告では、高齢者施設の救急搬送の33%は軽症で、5%は心肺停止の外来死亡だった。内因性疾患の場合は中等症以上が多いが、外傷は軽症が多く、医療職が配置されている高齢者施設では軽症での救急搬送が少なかった(4)。
佐々木(2020)の報告では、在宅医療機関の介入で、特養での入院による施設の入院による空床率を0.3%までさせることが可能だった(5)。
高齢者施設での医療介護連携は看取り率で語られることも多く、2019年の全国調査では特養の看取り率は34%と報告されている(6)。白石ら(2020)の報告では、救急搬送数が少ない施設は施設での看取り数も多かった(7)。

 高齢者施設の入所者は、認知症を合併している頻度が高く、入院の合併症も多い。慣れない場所に移動することにより認知症の周辺症状が悪化し、せん妄を合併する。誤嚥性肺炎・骨折・廃用症候群といった入院合併症により施設退院が難しくなるケースも多い。
慣れている場所でケアを続けることは本人のQOLを高めることができる。家族にとっても、病院受診に関わる諸手続きや費用負担なども軽減することができる。

 筆者が法人内で行った、介護職を対象とした「職務内でのストレス要因」についての研究では、救急搬送が第一位に上がった。現在、介護現場では人手不足が全国的な問題になっているが、離職防止という観点からも医療介護連携を進めて施設内で穏やかにケアを続けることは大きなメリットがある。

 一度入院が発生すると、施設には空床が発生して介護報酬の減額につながる。高齢者の入院期間は前述の通り入院合併症で延長となるケースも多いため施設運営にとっては大きなダメージにもなる。また、救急受診の費用や入院医療費は日本の社会保障費にも大きな影響を与える。

 医療介護連携を進めることは、救急搬送や入院を減らすことにつながる。本人のQOL向上だけでなく、社会保障費の削減・施設運営に寄与し、職員の離職防止にもつながる可能性がある。多死社会を迎える日本において、高齢者施設の役割は大きく、医療介護連携を進めることは社会的にも大きな意義があると考える。

6.参考文献
(1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング. 地域包括ケア研究会報告書. 2016.
(2)厚生労働省保険局調査課. 医療保険に関する基礎資料〜令和元年度の医療費等の状況〜. 2022.
(3)横浜市消防局警防部救急課. 高齢者福祉施設等からの高齢者の傷病程度別救急搬送人員. 横浜市救急業務検討委員会 第16次報P4. 2019.
(4)竹本 正明他. 高齢者施設から救急搬送された患者の検討. 日臨救急医会雑誌2017;20:516-20.
(5)佐々木淳.特養の医療アクセスに課題【連載第32回】.高齢者住宅新聞Online 2022.
(6)三菱UFJリサーチ&コンサルティング. 介護老人福祉施設における看取りのあり方に関する調査研究事業. 2019.
(7)白 山 裕 士. 介護老人保健施設 (老健) における救急搬送と看取りのあり方. 2020.

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