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コラム
 
診療報酬改定の中医協答申からー地域包括医療病棟と外来診療料「適正化」など
メディサイト 松村 眞吾

 2月14日、新しい点数が決まった。今回は介護報酬を合わせて読み込んでいく必要があるし、また量が膨大なので、答申内容で注目すべき点を抽出して論じたい。
先に要約しておく。
@人口構造疾患構造の変化に伴い急性期医療の内容が大きく変化していく。平たく言えば高度急性期とサブアキュートの中間を担う一般急性期的な医療が重要化する。地域包括医療病棟が活かせないか。
A診療所など「かかりつけ」医療機関は外来診療料見直しが厳しいところだが、発想を患者視点に転換し、糖尿病治療などの患者モチベーションをどう上げるかを考えていくことが必要ではないか。単独では取り組みが難しいかもしれない。
B処遇改善は必至だが、ベースアップ(ベア)と賃上げ率の違いも理解できていない経営者が大半であり、ここは先ず正確な理解と一般企業の動向を見ておきたい。

 大前提は2025年を迎えての高齢者医療の体制整備である。「地域包括ケアシステム」はコロナ禍もあって未完のまま2025年を迎えた。地域共同体の支えでケアする体制を目指したが、それは成らず、かなりの部分を医療で引き受けざるを得ない状態が残った。プラス「働き方改革」である。急激な人口減少の衝撃があり、担い手不足を緩和する意味でも重要な課題である。それらを踏まえての改定であると言い切ろう。

 さて具体策が高齢者救急についてである。200床未満の中小病院は診療所と共に「かかりつけ医」機能を担い、400床以上の病院は高度急性期として医療機能をブラッシュアップしていくべし、ということが前回改定までで明確になって来ていると考える。その間にある200床以上400床未満の中堅病院の役割・機能が問われるようになった状況があると考える。地域包括ケア病棟(地ケア病棟)は在宅医療をサポートするべしというのが、今までの厚労省のメッセージであった。だから地ケア病棟は中小病院を中心に、としつつ、複数疾患を抱えた(マルチモビディティ)高齢者救急に対応できない中小病院が問題になったと思う。総合診療医などの機能が必要となるのだが、中小病院にはそれが担えない。一方、今までの急性期需要は減っていく。人口構造と疾患構造が変わっていくのだから当然だ。7対1看護配置急性期入院料1の高度急性期と一般急性期の役割分担も曖昧になっていた。これは以前から指摘する関係者もあったことである。需要ではなく点数を見て7対1急性期入院料1を選ぶ動きも目立った。
 複雑化する高齢者の救急問題を整理する必要に迫られ、高度急性期、一般急性期、亜急性機/回復期の整理を狙ったのが、今回改定で登場した「地域包括医療病棟」ということであろう。地ケア病棟はレスパイトや在宅復帰に向けたリハビリ、熱中症対応など、あくまでもサブアキュート、ポストアキュートの機能を担うが、高齢者(それも後期高齢者)の誤嚥性肺炎や尿路感染症などの救急対応の機能が不足している。看護を含めた人材の問題も大きい。そこで地域包括医療病棟の登場である。 高度急性期においては「働き方改革」などもあって救急救命体制がギリギリのところまで来ている。一方で「なんちゃって」急性期が需要を超えて存在する。200床以上400床未満の中堅病院が高齢者救急においても重要な役割を引き受けるべきである、在院日数短縮や医療・看護必要度におけるB項目削除などは「なんちゃって」から一般急性期に帰れというメッセージなのだろう。地域包括医療病棟は「スーパー地ケア」ではない。一般急性期病棟なのだと考えたい。救急についての論点、「下り搬送」や医療介護連携評価については別に論じる。これについてはタクスシフト/シェアの問題であり「かかりつけ」医機能の在り方の問題である。救急問題の課題解決=出口はある。

 もう一点、診療所などの外来評価について論じよう。特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病などが外れ、一方で生活習慣病管理料算定要件から「月1回以上」が外れたことについてである。これは糖尿病治療に新しい可能性を拓くものになるかもしれないと、前に論じた。希望的観測である。そもそも生活習慣病管理料を算定するというのは、どんな診療を行うことが必要になるのか。運動療法、栄養療法などを作成して患者のサインが必要となる。手間暇かかる。
 患者の立場に立ってみたら、運動しろ、あれこれ食べるな、というストレスが多い療養計画を説明され、かつ高い窓口負担が待っている。ウエルカムだろうか。フィットネスクラブがある、キッチンスタジオがある、そういった病院なら治療を動機付けられるかもしれない。実際、実践しているところもある。今回の改定で減収は必至であり、厚労省を批判して愚痴ることに終わるところが大多数かと想像する。第二矢がなければ、厚労省の目論見は絵に描いた餅になる可能性が強いのではないか。診療所と中小病院は「かかりつけ医」とは何かをよく考える必要がある。因みにイギリスでは血糖値の変化に応じてGP(登録が義務付けられている家庭医)への報酬が変わるという。アウトカム評価がなければ糖尿病対策は進まない。
 今回、処遇改善ということで賃上げを促す(というか義務付ける?)内容が持ち込まれた。「ベースアップ評価料」と称するものなどである。難しい。そもそもベースアップ=ベアとはとは賃金表のプラス書換えのことであり賃上げ率とイコールではない。ベアを2.5%上げれば良いというものではない。ベアとは基本給のベースを一斉に上げるものであり、個別昇給査定は別にある。よってベア2.5%にいくら上乗せして賃上げとするのかが問われる。さほど理解がしにくいものである。賞与、一時金では対応できない人材不足が医療現場を襲いつつある。看護補助者の配置を評価する報酬があっても、そもそも看護補助者の求人に応募がない。月額給料を上げなければ、かつ「働き方改革」でワークライフバランス(WLB)の改善を図らなければ人は来ない。診療所と中小病院経営者は頭が痛い。
 しかし地域包括医療病棟は設計通りに具体化していくのだろうか。「かかりつけ医」機能を担う診療所と中小病院は減収を何をもって補うのだろうか。患者視点に立っての糖尿病治療を組み立てていく。それにはやたらと手間暇がかかる。賃上げはどうなるのか。複雑すぎる。それでも厚労省(と財務省なども含む国)のメッセージをよく読み取って人材育成と連携を中心に対応していくしかないのではないだろうか。地域医療連携推進法人制度なども活用して地域全体で対応していくというのが一つの解だが、各法人など病医院経営者は(経営統合までは行かなくとも)思い切った連携を組んでいくことができるだろうか。大いに議論して進めるべきことは進めなければ、人口減少/超高齢化が襲い掛かって来る。地方では既に始まっている。能登の医療状況を見ればよく分かるはずだ。

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