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コラム
 
2024年医師の働き方改革
湘南鎌倉総合病院
事務長 芦原 教之

2024年4月から施行される医師の働き方改革で医療業界は何をすべきであり、何を求めるべきなのかを考えてみたい。
医師の働き方改革に向けて、各医療機関は医師の残業時間ばかりに目がいき、最終的には人件費の高騰を危惧した考え方へと凝り固まっているように感じる。
そのために、医療現場においても多くの弊害が生じ始めており、特に救急医療の現場では、救急車の一極集中化が新型コロナウィルス感染症拡大以後(2023年5月以降)に顕著に数字としてみられるようになってきている。当院においても、新型コロナウィルス感染症拡大時に年間救急搬送台数が1.57倍の22,000台なっていたが、2023年5月以降も救急搬送件数は減少傾向を示さず1日平均件数は横ばいとなっているのが現状である。今後迎える2025年問題、2040年には高齢者と生産労働人口の同等になることも踏まえると、高齢者救急の増加とエッセンシャルワーカーの減少が拍車をかけていくことが予測される。
その中で、医師の働き方改革は大きなターニングポイントとなり、今後の日本における医療機関のあり方に影響を及ぼす始まりの一歩とも言える。また、2024年度は診療報酬改定もあり、医療機関の経営への影響も大きくなることが予測される。

今、医療機関では新型コロナウィルス感染症拡大後から増収減益の状況が発生している。これはコロナ禍に、新型コロナウィルス感染症対応のため病床稼働利用率が不安定になり、空床をもつことに慣れてしまった結果、さらには感染対策のため多くの人員配置ならびに外部委託を行ったことから人件費が増加し、採用が投資からコストへ変化した結果にこのような現象が起こっている。
人員配置について課題として認識はしているが、医療は人産業ということもあり、採用した人員を平時の体制にコントロールしなおすことは非常に困難であり時間を要するものである。解決の糸口として重要なことは、医師の働き方改革における変革であり、医師の人件費管理を従前のどんぶり勘定的給与体系から就業規則に準拠したルール下での給与体系へと変化させていくこと、さらに、医師の採用においても「人員配置」的考え方から「人材配置」的考えと切り替えていくことが必要であると考える。

加えて、医師の働き方改革により、医療機関は従前の医師の働き方のあり方において根本的改革を迫られており、医師一人当たりの生産性をしっかりと把握する仕組み(システム)を構築する必要があり、ここに他の産業界で用いられている仕組み(システム)を導入し紙ベースでの管理方式からDX方式へと切り替えていく時期が来ている。

さらに、医療機関は患者へ提供するサービスの時間(診療時間等)のあり方も見直す必要があり、1950年以来変わらない外来診療時間、退院時間などの根本的な変革を行い、医師の働き方、その他関連する職員の働き方に合わせた時間のあり方を考える必要がある。
これらの内容を進めていく上で医療機関の管理者は、医療経営の安定、適切な人材配置を進めてくための制度を整備し浸透させ、職員間ならびに職員患者間のコミュニケーションを円滑にするための組織を構築していく必要があると考える。

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