9月の14日から12日間、妻と一緒にアメリカの東海岸と西海岸とを訪問してきた。東海岸は主にニューヨークを歩き回り、西海岸はオークランドとバークレーを活動の中心とした。一応は「仕事半分・オフ半分」と決めて出発したが、途中から「仕事25%オフ75%」と微妙なシフトが起こり始め、最後は「まぁ、新婚旅行やな」と開き直ったところが実に我々らしい。だが、2年ぶりのアメリカでの充電は、非常に有意義だったと思う。
さて、我々がこなした数少ない仕事のひとつに「病院見学」がある。2つの病院、各々3セクション程を見学させてもらった。いずれも先方の関係者に3時間以上時間を取ってもらって、たっぷりと情報を得ることができとても感謝している。その中でも今回は、「患者参加型医療」として名高いプラントゥリーの本部もある、グリフィンホスピタル(コネチカット州)の様子を少し紹介してみようと思う。
ここは、妻の和田ちひろが数年前に訪問した場所でもあり、プラントゥリーのCEO(最高経営責任者)であるスーザン・フランプトン氏が来日講演をした際に私が講義通訳を務めたことがあるなど、我々夫婦とは非常に縁の深い病院である。フランプトン氏と2年ぶりの再会の挨拶を興奮気味に交わした後、我々は、最近特に興味のある「患者への医療情報の提供」に関して、彼らの先進的な「リソースセンター」を見学させてもらった。(そう言えば、そのとき病院の取材に来ていたPBS-日本で言うNHKのような放送局-の番組に急遽5分ほどの出演をしたのも、予期せぬ喜びであった。)
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Griffin Hospital
グリフィン病院
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訪問日
平成15年9月16日 13:30−17:00
インタビュイー
Anastasia Timpko(Volunteer/Community
Service) |
病院の駐車場には、軽やかな音楽が常時流れている。患者の不安を軽減する工夫なのだろう。とてもリラックスできる空間であることが瞬時に感じ取れる。
正面玄関を入って、左手に、コミュニティヘルスリソースセンターがある。
教育病院ということもあり、かつては職員用の図書室のみで、現在の8分の1くらいの大きさだったらしい。当時、患者用の図書室はなかったという。新しい病院を建てるとき、このリソースセンターを作った。現在は、患者用と職員用とが一緒の場所にあり、豊富な医療情報を提供するセンターになっている。
医師が患者をこのリソースセンターに送り出すこともあるし、医師自身も、例えば「心臓病に関するダイエット法」のことなどをこの「コンシューマーライブラリー」で調べることもある。
受付(写真正面)の右手には医学専門雑誌が置かれており、受付左手は一般用の書籍が置かれている。両者の間に境などはないため、どちらも利用は可能。基本理念として、「アドバイスはしない」。あくまで医療情報の「選択肢」の一つ。
「当院の患者さんはケアのチームの一員」という言葉が、ここでの医療ヴィジョンを示している。とても積極的で双方向なコミュニケーションが成り立っているように感じた。患者が医療情報を持つことにより、露骨な力関係はなくなる。例えば代替療法について他のオプションも知りたいという患者には、それを提供すべきという方針だ。
他院にかかっている患者も利用する。グリフィンにかかっている人である必要はない。
プラントリーの創設者、アンジェリカ・チェリオットが退院後、今の医療のあり方に疑問を呈し、医療モデルの変革のために運動を起こしたのがプラントゥリー運動。1978年には、サンフランシスコに「情報センター」を設立した。資金は裕福な彼女の友人が出したという。リソースセンターは、プラントゥリー加盟病院の1つの旗印にもなる。
教育病院では、パートタイムかフルタイムでメディカルライブラリアン(医療秘書)を配置することが望ましいとされている。ボランティアの役割は室内を整理したり、子どもに本を読んだりすること。病院全体には306名のボランティアがいる。
パソコンは3台設置されている。
病棟内にはサテライトセンターが2箇所ある。1階まで降りなくてもパソコンに自由にアクセスできる。
一般向けは5000冊(子ども向けのは含まれているかは要確認)子ども向けの書籍はおよそ300冊。医療に関するものがほとんどで、いわゆる読書のための書籍は置かれていない。
闘病記はおいていない。リスクがあることについても触れながら、今後、そろえていきたいと前向きな姿勢を見せていた。
日本での自費出版についての現状や、webでも最近闘病サイトが見ることができると告げると、「個人的な物語りがよいセラピーにもなる」と話していた。
医療者の姿がリソースセンター内でとても頻繁に見うけられるのが好感が持てる。医療者同士または患者とリラックスして会話する姿も見受けられた。
読書のためのスペースもゆったりと設けられている。

サテライトリソースセンターに開閉式の棚があり、そこには、疾患別にウェブサイトのコピーや患者教育ツールを作成している会社の教材などが並んでいる。看護師はこの棚から、患者に応じた「情報パッケージを作成し、ベッドサイドに持っていく。1階まで取りに来る手間が省けるため、医療者にとっても便利になった。病棟によっても対象とする疾患が異なるため、置いている資料も異なる。
このリソースセンターを作った時、公共図書館の人からお金が節約できると喜ばれたと言う。公共図書館との大きな違いは、「Help(手助け)するかどうか」だと言う。また、病院図書室と書店との大きな違いは「無料かどうか」という点にある。
3時間以上もの詳細な聞き取りと見学とで得た大量の有意義な知識を、この少ないスペースで語ることは到底不可能である。ざっと10%程度に圧縮したものがこのダイジェストだ。それにしても、個室ICUや病棟サービスの充実さなども含めて、確かに「夢の病院」の1つのカタチではあるなぁ…と2人で感じ入りながら、ニューヨークまで1時間半の帰路を電車でのんびりと帰った。