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コラム
 
今年生まれた子が二十歳になるとき希望の持てる未来になっているだろうか?
社会福祉法人四恩学園
理事長 中西 裕

 厚労省が7月20日に発表した2017年度の我が国の平均寿命は男子81.09歳、(世界3位)女子87.26歳(世界2位)と屈指の長生き国となった。しかし「長生きは幸せ」という価値観は崩壊し、20年後には人口が現在より2000万人も減る一方で、65歳以上が約4000万人とピークに達するという。 その上2040年の50歳時の未婚者は男性は3人に1人、女性は5人に1人が未婚であると見込まれ、単身高齢者はますます増加すると同時に、出生数は94万人(2017年度)から50万人台へと、とてつもなく減少する。
 貧困格差、超高齢社会、少子化、社会的孤立等。この不安社会にあって今年生まれた子が20歳になる時のことを思うと、子どもたちに希望の持てる未来を提供できるのだろうかと憂いるばかりである。
社会福祉業界は2000年の基礎構造改革以降、競争原理の中でサービスの質の向上や利用者にとっての価値を提供できたのであろうか。勝ち組、負け組という言葉に翻弄され「淘汰される」ことに危機感を抱くあまり、本来の役割を見失ってきたのではないか。勝ち組は福祉課題をどのように解決し、他を淘汰し、勝ち残ったというのか?あれからはや18年がたった。
 今日、社会福祉課題の解決は、本人が生活主体者として、自分らしく生きていくために、生活に関わるすべての分野の横断的支援と切れ目のない継続的支援が必要になってきている。福祉の流れは「競争」ではなく「共生」に向かっている。

 この7月地域密着型特別養護老人ホーム(29床)と乳児院(35名)を合築した施設がオープンした。「0歳から100歳までの地域共生の砦」をミッションとしている。
つまり分野横断的、総合的かつ包括的な実践を目指したものである。一つ屋根の下に生後間もない乳児と高齢者が共に暮らす施設である。
仕掛けはいくつかあり、その一つに点から面へと繋ぐ役割であるソーシャルワーカーの育成である。専門職の「タコツボ化」を防ぐ目的もあり、1階にある事務所を 「ごちゃまぜの事務所」にした。ここには、児童福祉の専門職のファミリソーシャルワーカー、里親支援相談員、心理士、看護師、高齢部門は包括支援センターのコミュニティーソーシャルワーカー、特養のケアマネジャーなどが一同に会している。絶えず他部門の情報が漏れ聞こえる環境の中で、情報共有、相互理解に努めている。
 更には一階玄関口にある地域交流ホール「地域創発スペース あびんCOハウス」の存在である。ここでは主に「福祉人材開発」「地域連携」「社会貢献」「ふれあい・イベント」の4部門でおよそ20の具体的な戦略がたてられている。あびんCOハウスの由来はもちろん「住吉区我孫子」に位置するということではあるが、背景には「あびんこ商店街」との連携を意識しており、従来から商店街主催の24時間テレビの共同募金や夜店などの出店協力や、法人が取り組む「子ども食堂『あびんこモーニング』」への商店街からの食料提供や広報などへの協力など従来からの関係を更に点から面へとつなぐものとして、関係づけたいとの思いからの命名である。「地域社会を構成する人たちがふれあい、繋がり、協働し1+1が3にも4にもなるような地域一体の『場」を創造する』というミッションを掲げた。

 この原動力となるのが、「ミックスモダン焼きの会」である。これは実践コミュニティの試行ともいうべき、キャリアを問わず自由参加で、地域へ思いを馳せる職員と地域住民の集まりで、いわばエンジン部分にあたる。あらゆる発想はここが起点になっている。1年目の保育士もベテランのソーシャルワーカーもケアマネジャーも地域住民も相乱れてアイデアを出していく。
スタートして1か月。果して地域一体の「場」はどのような展開を見せるのやら。
乞うご期待あれ。

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