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コラム
 
回復期リハビリ病院の診療報酬の観点からみた看護師の役割
Nurture 代表
甲南女子大学大学院研究生
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師
内橋 恵 氏

 我が国は、超高齢化社会を迎えていることや欧米に比べると病床数が多く、急性期病床を削減し転換を図るため、2000年4月の診療報酬改定に伴い、早期の在宅復帰を目指してリハビリ専門の病院を創設した。その回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハビリ病棟)の特徴は、対象疾患が決まっており、患者のADL*1)改善のため、多職種チームで生活場面を想定したリハビリ・ケアを行うことである。そのため看護師も病棟においてリハ看護を行うことが求められている。  今回、回復期リハビリ病棟(入院料1)の診療報酬体系からみた看護師の役割を読み解く。

 回復期リハビリ病棟(入院料1)の収益はリハビリ実績指数も入った特定入院料の包括払いと疾患別リハビリ料の出来高算定の合算である。その評価体系に組み込まれている実績指数とは、リハビリのアウトカムのことであり、簡単に述べると運動F I M*2)が上昇し、早く退院すれば実績指数が上がる計算式になっている。実績指数は、3ヶ月に一度算定し、実績指数が達していない場合、その報告した月の翌月から入院料が一段階下がった上に、疾患別リハビリ料は、特定入院料に包括される。一つひとつの部分が下がるというより、ダルマ落としのようにドンと一つ下がると高さが変わると想像して欲しい。

 回復期リハビリ病棟の全国平均在院日数は約70日であり、その日数で患者のADLの向上という結果を出すため、多職種チームメンバーは、転院当日から多彩なリハビリを開始する。それは、リハビリ単位として認められている9単位(3時間)だけでなく、食事や排泄などあらゆる生活場面において多岐にわたる。看護師も、患者一人ひとりの目標が叶うような看護を提供する。
 一方、本病棟の特性上、急性期病院のような看護技術を学ぶことが難しく、看護師自身の達成感を得にくいという意見を聞くことがある。
果たして、そうだろうか。
 日本リハビリテーション看護学会は、「リハビリテーション看護とは、疾病・障害・加齢等による生活上の問題を有する個人や家族に対し、障害の経過や生活の場にかかわらず、可能な限り日常生活活動(ADL)の自立とQOL*3」(生命・生活・人生の質)の向上を図る専門性の高い看護である1」。」と定義している。24時間のうち、リハビリ時間(3時間)と睡眠時間(9時間と仮定)を除くと、12時間を生活機能障害の回復過程にどのように看護を提供するのか。この提供こそ多職種から様々な情報を得やすい回復期リハビリ病棟の看護師の役割、腕の見せ所(質の高いケアのマネジメント)である。
 その結果、入院料ごとに定められたリハビリ実績指数を早期に達成し、患者とwin×winの関係を築けているのである。

 最後に、回復期リハビリ病棟は、急性期病院から紹介された時点で患者の症状、機能評価、重症度および受け入れる病棟の状況などに加え、リハビリ9単位(3時間)に耐えうる状態か、リハビリ意欲があるか、問題行動がないかも重要視している。残念だが、様々な患者の状態(特に低栄養)からADLの伸び代が少ないとなれば、実績指数に影響する因子のF I M利得つまり収益に直接関係するため、退院調整せざるを得ないからである。回復期リハビリ病棟への転院は、2020年度から転院までの期間が免除されたこともあり、決して申し込み順でない。案外、このことが知られていない。転院初日からリハビリが開始される回復期リハビリ病棟への早期転院のポイントの一つは患者の体力の有無である。急性期病院における患者の体力維持をお願いしたい。

 患者の人生において、急性期や回復期の時間はごく僅かであり、ほとんどを生活期で過ごす。その人生、引いては生活をより良いものにするためにも、私たち看護師もそれぞれの病期における診療報酬の仕組みを知った上で、患者のADL維持・向上にむけて看護を提供する必要がある。
それらすべてが患者のQOLにつながる-。

*1 ADL(Activities of Daily Living):日常生活活動
*2 FIM(Functional Independence Measure):世界的に普及しているADL評価法。18項目各々を全介助の1点から自立の7点に採点し、合計点も算出する。
*3 QOL(Quality Of Life):生命・生活・人生の質
1)日本リハビリテーション看護学会. (n.d.). 日本リハビリテーション看護の定義. https://www.jrna.or.jp/ (閲覧日2021年3月19日)

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