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コラム
 
 医療再生は可能か 
  メディサイト 松村 眞吾

 今、選挙で大きな論点として医療の問題がとり上げられている。民主党などは「後期高齢者医療制度」の廃止を掲げている。医療費抑制の取り止めなどは、自民党も共通する意見である。社会保障のことが大きなテーマになることは歓迎すべきことであろう。ただ、どこまで冷静な、そして実現可能性ある議論が行われているかが問題である。

 医学部の定員を増やしても、その卒業生が医師として戦力化するのは10年先の話である。医師増員といっても簡単なことではない。公共事業費(道路)よりも医療費(生命)といっても、大きく削減された公共事業費の削り代が、どこまで残っているのか心もとない。高齢者は増えて、おそらく医療ニーズも増えて行くだろう。だから“崩壊”に瀕した医療の再生は喫緊の課題なのだが、マスコミやネットで言われるほど簡単なことではない。

 先日から、ある出版企画で高齢者医療を巡る取材を重ねてきている。財源をどうするのか、という問題は、かなり認識されるようになったと感じる。それから提供される医療の内容についての意見が百出している。かかりつけ医が、やかましく言われるようになった。プライマリ・ケア関係3学会の一本化も決まった。急性期、回復期、維持期の機能分担をどうするかの議論も少し進んでいる。そして療養病床削減と介護の問題は、いよいよ深刻化している。

 限界集落といわれる高齢化の著しい地域がある。そんな地域にあっても「近くで安心して入院できる」病院を求める声がある。過疎と高齢化がダブルで地域を衰弱させている。医療・介護までインフラが弱くなることは耐えられないのかもしれない。地方は、そこまで来ている。ただ、公立“総合病院”を存続させようとすることは、医師不足に拍車を駆けるだけだという意見は、かなり強くある。産婦人科も崩壊してきている。いろいろあるが、ハイリスク出産の増加にもかかわらず、専門機能の集中化は遅れているのではないだろうか。産婦人科医会の先生が語っている。

 量の確保は重要な問題である。より大切なことは医療の質を高めることだと考える。 
品質を高め、維持することは医療サービスにとって、医療機関を経営する上において、肝心要のことと考える。量も必要であるが、必要な医療供給を増やして、その質を高めることがさらに重要である。行政の、そして我々、経営専門職がなすべきことは、医療の質を高めて行く仕組み作りである。

 医療再生は可能である。ただし、量を論じるだけでは破たんする日は近い。質を通じた医療再生は、結果的に対費用効果の高い医療を実現する。優れたアウトカムは、低コストに通じている。例えば、DPC実践のポジティブな面は、そのことを教えてくれる。優れたアウトカムを実現することは、スタッフのモラールを向上させ、集患・増患にも寄与する。出来ないことではない。ささやかなクリニックでも、かかりつけ医としてなど実践可能だ。チャレンジする価値はある。

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