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コラム
 
 建築家、デザイナーと一緒にクリニックをリニューアルする   
   メディサイト 松村眞吾

 ちょっと面白い仕事がきた。ある開業医の先生からクリニックのリニューアルを考えて欲しいという依頼である。単なるリニューアルでなく、これを機会にコンセプト、診療方針の再確認を行って、スタッフのユニフォームからベッドのシーツ、診察券、在宅医療用のクルマに至るまでをトータルにデザインし直そうというのだ。

 以前から疑問に思ってきたことがある。医療機関を専門とする建築家の中には機能優先の傾向を持つ方がいる。明るく清潔なイメージのものを設計するのだが、患者の立場からすると不満が残る。例えば待合室である。明るく清潔だが温かみがない。患者動線とサービス動線は分離せよと説く。医療スタッフと患者の間のコミュニケーションは廊下で交わされる。大病院ではないのだからクリニックレベルで動線分離を振り回すのはいかがであろうか。クリニック内で動き回るスタッフの服装は建築デザインのイメージを壊していないだろうか。病院らしくないといいつつ、ユニフォームは病院そのものという矛盾である。

 知り合いの建築家でありデザイナーでもある人と一緒に、院長先生らの話を聴きに行った。リニューアル前でも様々な工夫が凝らされている。患者参加でプランニングしたものらしい。玄関入口には車椅子に乗ったままでも大丈夫な位置にインターホンがある。狭い院内だが診察室は扉できちんと仕切ってプライバシー保護を考えている。トイレはセンサーで使用中の赤ランプ表示が点灯する。それでも全体をリニューアルしたいという。患者とスタッフが自然に集まり交流するような場にしたいという想いを持っている。サービスという目に見えないものと、内外装や備品、ユニフォームなどの目に見えるものの両者のイメージを統一して、患者を迎えたいということだろうか。先般、訪問した別のクリニックを思い出した。センスのいい内装、笑顔の美人?受付スタッフの一方で、玄関の自動ドアから吹き込む冷たい風があり、院長先生のことを最大級の敬語で話すスタッフ(患者にはタメ口)がいた。

 クリニックも「全身全霊」で情報発信する必要があると思う。開院当初は建築も各種デザインも必死になって考えて、診療コンセプトも真剣に作るかもしれない。5年後10年後はどうだろう。壁が汚れた、椅子が古くなったと継ぎはぎのやり替えを行なう。診療は10年1日のごとくとなってスタッフは入れ替わり、初心はどこかに行ってしまった、ということはないだろうか。一流の建築家、デザイナーは目に見えないもの(内容)を見事な形に仕上げるが、施主側が丸投げすると魂が入らない、つまらないものに仕上がってしまう。

 私は決心した。全部をリニューアルしようという院長先生の気持ちに応えるべく、先生、クリニック側のスタッフ、私の仲間である建築家、デザイナーと一緒にチームを組んでクリニックのリニューアルに挑戦してみよう。

※「患者」という呼び方について
今回は自らを患者チームと考えたため「患者」という言葉を使っています。
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