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コラム
 
 流れを読み違えるとリスキーかもしれない  
   メディサイト 松村眞吾

 難しい世の中になったものだと痛感する。先の参議院選挙で日本医師会推薦の候補が落選した。近畿を中心とする医師会員が執行部に反発していたことはあるが、しかし一方で進行がん患者である山本孝史さん、HIV訴訟の川田龍平さんが当選していることを考えると、患者の声というものが確実に大きくなってきていると思う。恐ろしいくらい時代の流れが速くなっている。

 厚生労働省は「総合科」の新設を目論んでいる。入り口は開業医で、専門治療は病院でという役割分担をより明確化しようという考えだろう。「総合科」標榜は一定の認定制度の下で行おうということだ。多くの開業医は反発している。今まで実践してきた自負があるからだろう。一方で「重篤な疾患を見落とすことなく、適時適切に専門施設に送らなければならない」という、いわゆる転医義務は判例として確立している。問診から診断、治療とその後の判断まで開業医に求められてくる技術水準は高くなってきている。

 日本医師会の調査(今年1月公表)では、患者のかかりつけ医に対するニーズは必要時の専門医紹介、どんな病気でも先ずは受療できること、日常的な相談機能などである。そして医師側が思うほど、患者側は医師が一人ひとりの状況に応じた診療をしているとは考えていない。説明責任を求める声も急速に高まってきている。クレイマーが増えたという声もあるが(それも実感する事実だが)、現実を直視する必要がある。

 医師不足が議論になっている。客観的データから事実であり、何らかの政策対応が必要である。一方で抜け落ちているのが、医師は医療以外の仕事に追われていないか?という検証作業である。静岡がんセンターではキュア(治療)とケアをはっきり分けて、ケアチームは看護師を責任者にしている。ケアの専門家でない医師がケアの責任を負わされているのも変な話だと思う。クラークと呼ばれる医療秘書を増やすことで、かなり作業が減らせるのではないか。足許からも手を打っていかなければならないと思う。

 開業医の先生方の悩みは「在宅」である。24時間対応の体制などたまったものではないというわけである。医師も普通の人間だからだ。一方で「やっぱり自宅が一番」という在宅患者さんもいる。難しいが、何らかの形で在宅医療対応も必要になっていこう。

 大変な時代になったと実感する向きが多いと思う。そして、この流れを甘くみてはならないと思う。流れに逆らうのではなく、建設的に対応しなければしっぺ返しを食らうこともあろう。様々な対話を積み重ねていくことが大切である。医師と患者、医療・介護チームのメンバー間の会話、出来れば行政との会話などである。
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