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コラム
 
 師走に考える−コンサルタントの「嘘」、医療モールの「罠」 
  メディサイト 松村眞吾

 今年はいろいろな仕事を頂いた。考えさせられたのは、「開業コンサルタントの事業計画が狂いっぱなしで困っている」や「医療モール運営が上手くいかない」というSOSに応える経営再生の仕事である。難儀な仕事である。なぜコンサルタントの計画通りにいかなかったのか、医療モールへの期待がどうして裏切られるのか、一筋縄でいかない実情が見え隠れする。そんな経営再生業務は、引き受けても成功するとは限らないし、クライアントの立場上、実績をアピールするわけにもいかない。それでも引き受けてみたら‥

 コンサルタントの出自は様々である。広い分野にまたがる医療経営のことを熟知しているプロは少ない。開業コンサルタントは、取り敢えず無事に開業させることで精一杯というところではないだろうか。悪意でなくても「嘘」が後になって判明してくる。ある開業医の先生は勤務医時代より所得は倍増したが、生活費は減らさざるを得なくなった。損益と資金繰りの違いを事業計画に仕込まなかったため、借金返済と税金で手許のお金が逃げていったのである。お金の問題だけではない。スタッフとのトラブル、電子カルテ導入の失敗などいろいろな問題がある。プロでなければ失敗もあって当たり前。例えば、地域の医療事情をよく知っているコンサルタントがいる。格安のフィで請け負うが、資金繰りのこと、労働法規のことに詳しいわけではない。

 医療モールの広告が謳う。「クリニックが集まって相乗効果が期待できます」。本当にそうなのか。オープン当初はどうやって患者さんを集めようかと、先生方も協力し合う。1年後2年後に行き違いが生じてくる。モールで講演会を企画しても「私のところは関係ないですから」と協力しない先生が必ず現れる。「うちはこれ以上、患者さんにきてもらう必要はありません」。協調を放棄するクリニックがいくつか出始めたところで、その医療モール運営は崩れ始める。先生方をコーディネートすることは難事中の難事である。仕掛けのない医療モールには、効果に限界があるのは当たり前。「集まれば効果が上る」という甘い言葉に「罠」が潜んでいる。

 事業計画は狂うものである。資金調達ができて開業が実現できれば「めでたし、めでたし」なのか。「経営」という仕事は開業後が本番である。器すら満足に出来ていないクリニックや医療モールは意外に多い。

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