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コラム
 
 経営再生の相談が増えています 
  メディサイト 松村眞吾

 最近、経営再生の相談が急に増えてきた。背景には、多くの医療機関が対前年で減収傾向にあることがある。街角の内科開業医の場合はそれほどではないにしても、保険診療だけでは生き残れないと自由診療を大々的に展開しているところなどの打撃は大きい。医療経営の関心が診療報酬の動向ばかりに行き過ぎてきたきらいがある。景気動向という、もっとも注意すべき経済のことを等閑視してきたことの、ある種のツケが回り始めている。今回の不況を過小評価してはならない。

 多くの医療機関は対費用効果を考えずに機器投資を行ってきた。500万円の機械でも月々のリース料は10万円足らずだと、収入見込みをろくに計算せずに投資する例を、どれだけ見てきたことだろうか。町工場はそんな乱暴なことはしない。大手メーカーでも投資にはかなりの検討時間をかける。診療報酬は低く抑えられているといっても、価格競争になって廉価乱売になる虞がない。それに甘えてきたと言われても仕方ない面がある。正当な報酬は受け取るべきだが、市場原理が働く自由診療(保険診療でも自己負担が増えれば同じく)では、需要者側(患者さん)の買い控え(受診抑制)があることを忘れてはならない。

 資金繰りも大切である。診療報酬は確実に入ってくる。一般企業は取引先の倒産、銀行など金融関係からの資金引き揚げなどに怯えている。黒字倒産という言葉をご存じだろうか。利益が出ていても、資金がショートすれば企業は潰れてしまう。それが事業の現実であり、そういった当たり前のことを知ることから始めたい。

 生き残るために何をなすべきか。保険診療を大切にすることと考える。保険診療が基本であり、それをおろそかにして自由診療に依存するのは危険である。美容系であっても、例えば形成外科診療のエビデンスが信頼の元となる。もちろん不妊治療など例外的な専門医療はある。一般的な基本のことを言いたいと思うのである。話を戻す。次になすべきことは、サービス品質を上げることである。これは人を大切にするということに同義である。患者さんとのコミュニケーション、スタッフの動機づけに注力することである。医療安全も人次第である。

 当面は状況を見守りたい。計画案作りまで止める必要はないが、投資実行などは慎重でありたい。調達できる金額の多寡ではなく、借金を返していくための原資確保の見通しが大切である。ドラッグストアの店頭に異変が出始めている。今まで隅っこに追いやられていた市販薬(OTC)がメインの陳列棚に並び始めた。ちょっとした風邪であれば市販薬で治そうとする人々が増えている証かもしれない。街中景気ウォッチングもお勧めしたい。

 医療・福祉も一般市民の財布からすれば聖域ではない。ごく普通の人々の生活と考えを知って、また今回の不況の見極めを行って(3月の年度末になれば見えてくるかもしれない)、過度の楽観も悲観も排して、エビデンスある行動を取るべし、と考えたい。

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