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コラム
 
 臨床研修制度の見直し案をみて考えること 
  メディサイト 松村眞吾

 先般、「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」の見直し案が出た。卒後研修を2年間から実質的に1年間に短縮してローテートする科も、必修は内科・救急・地域医療の三つに減らそうというものである。期間短縮によって専門診療科に進む時期を早め、医師不足の緩和を図ろうというものだそうだ。朝令暮改的なこの動きには疑問がぬぐい切れない。

 報道によれば、全国自治体病院協議会の邉見公雄会長は、制度開始後、5年もたっていないのに見直すのはいかがなものか、と述べているという。何年か前に赤穂市民病院の院長室に邉見先生を訪ねたことがある。雑誌のインタビュー取材が目的であったが、若い医師の受け入れにはスキルアップできる研修を用意しなければならないと、熱っぽく語っておられたことを思い出す。研修期間を短縮して早めに希望診療科に入れるようにしたとして、研修医の専門診療科への意欲アップに繋がっていくものだろうか。

 2年間のローテートは総合的な診療能力を持った医師を育てようという狙いがあった。
医局の力が落ちて地域医療に影響したことは、確かに否定できない。しかし、総合的な診療能力の強化はプライマリ・ケアの充実に貢献する。迂遠なようだが、専門医療の充実にもなっていくものだと言えよう。小児科、婦人科領域なども日常的な疾患については診療できますという医師が増えることは、この分野で深刻な医師不足を多少なりとも緩和するはずである。そもそも医師免許には麻酔科を除いて診療科の縛りがない。

 医学部定員を増やすなどの策は10年先にしか効果が出てこない。医師不足を本気で解決して行こうとする気があるのだろうか。医師が医師本来の仕事に集中できる仕組みを作っていくことが大きな課題である。ナース・プラクティショナーなど一部の診療行為を担うことの出来る看護師制度があっても良いし、助産師の役割拡大もある。クラークの充実も効果が大きい。専門医が専門医療に集中できる体制も重要課題だろう。

 私たち事務系の人間には、若い間に営業から人事、経理、工場など幅広い業務経験を積まされた経験の持ち主が多い。今は専門分野が決まっているが、若い時にいろいろな部署をローテートした経験は、チームで仕事をする時などに、大きく役立っている。多少でも勘があればかなり違うからである。各々の専門の人間を使うのに有効だ。医療職は例外なのだろうか。

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