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コラム
 
 患者と医師とのコミュニケーション 
  NPO法人ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口 育子 氏

 COMLは1990年9月に活動をスタートして以来、日常の活動の柱として全国から電話相談を受けつけてきました。18年半で届いた相談総数は、45000件に及びます。
 多くの電話相談に対応していて感じるのは、患者の苦情や不満、悩みのきっかけのほとんどは、医療者とのコミュニケーションギャップだということです。まず、説明不足や専門用語の多用といった医療側の問題があります。インフォームド・コンセントの必要性が叫ばれ、「患者に十分説明しなければ」という意識は浸透しました。しかし、まだまだ医療側が必要とする情報の一方通行でしかないように感じます。また、情報の非対称性や一度に提供される情報量の多さによって、患者の理解が追いつかないことも少なくありません。

 もちろん、コミュニケーションギャップには、患者の側にも問題点はあります。説明の理解の努力をせず、わかったつもりになる。質問や確認をせず、思い込んでしまう。最初から不信の目を向けている、などなどです。
 なかでも、コミュニケーションギャップが起こりやすい原因の一つとして、同じ言葉でも医療者と患者ではイメージすることが大きく異なるという問題が挙げられると思います。「簡単な手術」「よく効く」といった平易な言葉でも、互いが抱くイメージには大きな開きがあります。そのギャップを解消しないままに進むと、「こんなはずではなかった」という結果に発展してしまうのです。

 「医療崩壊」と医療の危機が叫ばれるようになって医療現場が防衛的になり、萎縮している姿も目立ち始めました。入院を休止したり、閉鎖したりする病院が増えている報道も後を絶ちません。
 最近は患者側の過大な要求や非常識な態度も問題になっています。そのため「困った患者への苦情対応」と十把一絡げに語られることが多いと思いますが、どのような問題があるのか分析して、内容に応じた対応をすることが医療側にも求められると思います。

 医療の危機を何とか救うためにも、いま一度原点に立ち戻り、患者・医療者双方が冷静に信頼関係を再構築しつつ、安定した医療のために何が必要なのかを共に考える必要があると思います。いまこそが、そのターニングポイントだと考えています。将来の医療がほんとうに崩壊してしまわないために、互いのマイナス面を突付きあうのではなく、冷静にともに歩む医療を取り戻したいと思います。
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