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コラム
 
 診療報酬・介護報酬同時改定を前に−(1)基本に返るということ 
メディサイト 松村 眞吾

 いよいよ4月に診療報酬と介護報酬の同時改定が迫ってきた。細部の詰めは未だ議論中であるが、概ねの内容が分かってきた。注目したいのは以下の点である。診療報酬での急性期病院の評価(勤務医の負担軽減など)と在宅移行へのさらなる促進、DPCにおけるエビデンス重視など、介護報酬における定期巡回・随時対応型訪問介護・看護(24時間訪問介護看護)サービスの創設、デイサービスの評価見直しなどである。2025年を着地点とした地域包括ケアの具体化が見えてきた内容となっている。

 病院は治療するところであり、治療一段落後の基本は在宅療養とし、それを地域ネットワークで支えるという構図がある。また医療費と介護費の効率化を狙う国の意図もはっきりしている。外来は診療所を主体に、病院は入院治療と在宅バックアップを担い、病院・診療所・介護の連携を強化していくということを医療・介護の世界に要求している。機能分化と連携評価という2010年診療報酬改定の流れが加速された格好である。

 さて、これに対して、どういう対応していくか。細目に目を奪われてはならないと感じる。急性期はエビデンスある専門医療を磨き、回復期と療養期の病院は在宅復帰と在宅支援機能を充実させ、診療所と介護は連携して在宅療養を支える努力を一層、強化していかなければならないだろう。ここで見逃してはならないのは地域との連携である。医療と介護、その中だけで循環していては地域包括ケアに対応していくことはできない。街づくりの視点が強く望まれる。サービス付き高齢者住宅の制度が始まったが、高齢者住宅という単品だけで考えていくことは、中長期的な経営を誤ることになろう。

 基本に返り基本を強化する、ということに集約されると考えたい。DPC参加病院は1,600を数える。エビデンスある急性期医療のためのデータはたっぷりあるはずであり、その活用は係数のプラスとなって報われてくるであろう。在宅療養を支える場合、チームが重要となるが、それぞれが専門性を磨き、その専門性を尊敬し合うことを忘れてはならない。カンファレンスが最重要な場となろう。カンファレンスでの情報共有と方針決定は在宅医療・介護の質を決定づける。

急性期から在宅まで、住み慣れた地域で最後まで暮らしたいという人々のニーズをチームで支えることは、患者・家族の生活の質(QOL)向上に繋がる。顧客価値の創造こそが事業の基本であるが医療と介護もその例外ではない。そのためにも組織運営においては「横串を刺す」ということが今まで以上に重要となる。職種や部署、さらに事業体の間の連携を図っていくことは難しいが、不可能ではない。ここでのイノベーションが医療介護経営での経営力向上を左右するだろう。エビデンスと患者・家族価値の創造、お互いの専門性尊重が鍵となる。法人内完結も方法であろうが、地域完結の思考法を考えてもらいたい。

 概念ではエビデンスある専門性、連携、患者・家族価値、方法論ではチーム、カンファレンス、街づくりなどがキーワードとなろう。点数・単位数の穴を探して増収を図ろうとする策は好ましくない。中長期的に経営を危うくしかねない。過去の改定の度に「穴」が封じられて大騒ぎしたことを忘れてはならない。基本が最も重要である。

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