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コラム
 
 診療報酬・介護報酬同時改定を前に−(3)機能分化と連携の意味するもの
メディサイト 松村 眞吾

 前回は在宅重視に関して書いた。もう一つ今回改定で目立つのが、機能分化と連携であろう。機能分化について考えてみたい。特定機能病院や500床以上の地域医療支援病院について紹介なしの外来を抑制するとの方針が打ち出された。また看護配置における7対1看護基準や10対1看護基準での看護必要度などのハードルが高くなった。これらは急性期を絞り込もうという動きと解釈できる。一般外来は診療所へ、病院は入院と専門外来にという流れを作ろうとしている。医療と介護の関係においても維持期リハビリを医療保険適用除外化など医療と介護の機能分担も明らかにされている。

 勤務医への負担軽減ということで医療クラーク配置、手術料評価などが手当てされる。しかし急性期病院の経営にとって、在院日数短縮は病床稼働率低下=入院患者獲得のプレッシャーが高まることを意味する。一般外来は診療所へ、という流れになれば、開業医からの紹介獲得を増やすか救急に力を入れるしかない。病診連携はますます重要となる。地域連携パスの拡大も診療所との機能分担と連携に注力しなさいということになる。もちろん回復リハビリ病院などとの連携も退院調整上、必須のこととなる。

 DPC/PDPSにおける係数改革はより実績を問うものとなった。対前年収入保証といった性格を持つ調整係数から基礎係数へ、機能評価係数Uで、例えば地域医療における貢献を定量的に評価するなど、アップコーディング(高い点数の疾患に分類)のテクニックが通用しなくなってくる。DPCデータの意義は診療内容の可視化(見える化)である。エビデンスなき急性期治療は淘汰されていくと思って良い。

 診療所はどうか。在宅の取組みは言うまでもない。時間外対応加算が注目される。24時間対応であれば5点、準夜帯対応で3点、輪番対応であれば1点が加算される。再診料を据え置いての時間外対応加算(旧地域貢献加算)の設定は実に巧みなボールを投げてきたものだと感じさせられる。かかりつけ医としての役割を果たし、軽症患者の救急搬送を減らすことによって勤務医の負担を減らすのに協力しなさいということになる。開業医の役割はプライマリ・ケアの分野において高まってくる。ただし負担は増えるかもしれない。総合医制度の構想も歩みを止めていない。外来は診療所へ、にどう対応するかが次回、次次回改定への備えとなる。

 回復期、療養期も従来のままでは追い込まれるだろう。急性期から在宅へのつなぎの役割だけではないだろうが、在宅バックアップ機能の強化(有床診における緩和ケアや看取り評価など)を含めて、急性期の絞込みと在宅以上加速の狭間での医療ニーズにきめ細かく対応していく必要がある。特に在宅バックアップ機能は重要性が大きくなっていくであろう。

 自分のところの機能を棚卸しするところから始めなければならない。大学病院から診療所まで「何でも診ます」では生き残っていけないだろう。総合診療というのもプライマリ・ケアに徹底して対応できるという意味では専門性の高い分野である。介護の分野も然りだろう。単なる出来高評価からスキル評価、実績評価へと診療報酬も介護報酬も大きく転換しつつある。

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