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コラム
 
診療報酬改定を機に考えること−医事課員の病棟配置
メディサイト 松村 眞吾
 ある病院の取組みが面白い。医事課員を病棟に配置したのである。いわゆるクラークを医事課に所属させているという意味ではない。レセプト業務といわれる診療報酬請求業務に当る医事課員を事務局の部屋ではなく病棟に配置して仕事をさせているのである。PC端末があれば、別に事務局の部屋でなくても仕事はできる。

 近年、診療報酬はストラクチャーと呼ばれる体制整備からプロセス、そしてアウトカムのいう実績を見るように変わってきた。7対1看護配置で言えば、単に看護師に人数を揃えるだけでは駄目で、平均在院日数18日に加えて看護必要度15%というハードルが課せられている。今春の報酬改定では、平均在院日数のさらなる短縮と看護必要度の厳格化が予想されている。看護必要度とは手厚い看護の必要な患者の比率を言うが、その看護の必要度の計算式が変わる。1日に何度も血圧測定して看護必要度を上げるといったことが散見されたが、それができなくなる。こういったことがどういう意味を持つか。

 看護必要度は名称も重症度、医療・看護必要度と変わって、今までよりさらに看護記録の重要性が高まっていく。看護師は基本的にベッドサイドケアを重視して書類仕事を厭うが、医事課からすれば看護記録を今まで以上に整備して欲しいということになる。何が必要か。看護部と医事課に間のコミュニケーション向上である。診療部や薬剤部との関係も同様である。ある高度急性期病院では、コミュニケーション頻度次第で看護必要度が2〜3%も変わってくるという経験をしている。

 さて医事課を病棟配置した病院はどう変わったか。コミュニケーションは驚くほど向上したという。病棟の実際を知る。医事課にとって極めて重要なことである。診療情報管理士有資格者を活用することも考えたい。カルテを読める、他院データとのベンチマークができる診療情報管理士有資格者は医師との「会話力」を持ち得る存在だ。病院事務職員だけではない。ある会計事務所は職員研修の一環として1日看護師体験を、協力する病院で行なっている。診療報酬算定の理屈だけでなく現場の実際を知ることは大きな意義があるという。

 薬剤部の部屋に立てこもる薬剤師は未だ数多くいる。管理栄養士も厨房を自らの砦とする病院がある。医事課なら当然に事務局の部屋で執務させている。もったいない。コミュニケーション効果は大きい。得るべき収入確保、結果としての医療の質向上があるはずだ。看護記録の意味意義が院内で共有されるだけでも大きい。一歩踏み出せば、新しい医療チームが、そこに誕生する。

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