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コラム
 
地域包括ケアシステム、何をするのか、できるのか?
メディサイト 松村 眞吾
 地域包括ケアとそれを具体化する仕組みである地域包括ケアシステムの議論が本格化している。具体化への動きも急であると言って良い。動きが進めば進むほど、様々な疑問が湧いてくる。

 2025年には、今より+100万人の介護職が必要となるらしい。どうやって確保するのか。互助、要するに助け合いと国も言うが、それで補えるのか。地域コミュニティは再生可能と私は考える。
都市に住む者は関係性の希薄さを好むと言うが、それ程、悲観的にはなっていない。それはともかく、介護の世界に人材を誘導するためには魅力を付けていかなければならない。社会福祉法人の私物化批判が言われるが、一方で「奉仕」だけを求められても経営者は居なくなる。キャリア設計の観点が全く抜けていると感じるのである。

 共同化できる機能は、組織を大規模化して共同化しようという動きがある。非営利ホールディング型法人構想などである。一人院長診療所では24時間対応は無理がある。あらゆる業種業界で事業大規模化が進む中、医療介護が例外であるはずがない。しかし縦割りの強い医療介護業界で、経営を一本化すれば連携が円滑化するのか。

 「包括」は最終的に統合化を意味するとも言われる。職種間でお互いを尊重する風土、職務内容の理解がないところで「顔の見える関係」だけで多職種協働・連携は可能か?医療と介護が統合されれば、医療が上に、介護が下にという関係がロックインされるだろう。人にはプライドがある。それぞれにプロフェッショナルな存在である。訪問看護師とケアマネの協働を、言うだけなら簡単だが、現場に落とし込むことなど、学者にはできない。もちろん官僚にも、医療法人経営者にもできない。マネジメントのプロが入らないと無理である。

 「地域包括ケアシステム」資料には、組織論が書かれていない。非営利ホールディング型法人は書かれていても、そのマネジメントが無い。もちろん、マネジメントは可能だが、それを舐めてかかった画餅と見えてしまう。他職種と共同研修を受けて、「顔の見える関係」を作って、懇親会で「良かった、お疲れさん!」で終わってしまってはいけない。

 事業継続には強力なトップと同じく強力な事務局が必要である。誰が担うのか?行政なのか? システムと言うからにはマネジメントが必要なのである。ヒト、モノ、カネ、情報という経営資源の調達と分配。リスク回避では不十分でリスク対応のスキル。何よりも多職種過ぎる「地域包括ケアシステム」のマネジメント。真剣に考えなければならない。

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