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コラム
 
2016年診療報酬改定を「深読み」する
メディサイト 松村 眞吾

 診療報酬改定の内容がほぼ固まった。急性期病院を中心に、それなりに整理されたものとなったと感じる。ある病院の医事課長も「診療部、看護部に説明しやすくなった」と言う。昨年の介護報酬改定はマイナス改定という厳しい内容だったが、重度者重点、地域での予防という方向性は打ち出された。今般、急性期病院も何を担うべきかを明らかにされたと思う。一言で言えば重症患者に集中しなさいと言うメッセージである。診療所関係なども「かかりつけ」機能を充実させるということが、より明確になった。

 今回は「地域包括ケアシステム」の構築を促進するということが中心テーマとなった。地域完結型医療を、さらに促していこうというものだ。急性期病院の入院評価も、診療所や薬局の「かかりつけ」機能評価も密接に絡んでいる。内科の開業医だから病院の報酬は関係ないと言っておれない内容となった。基本は地域の「かかりつけ」医が「ときどき入院ほぼ在宅」をコーディネートする役割を担い、入院も専門医療も在宅医療も、かかりつけ医が交差点で交通整理する役割を担うと読める。

 急性期病院は、7対1看護配置の重症度、医療・看護必要度の内容が改められた上で25%という要件が設けられた。DPCも重症度係数、CCPマトリックス(重症度別評価)の導入が決まった。在宅復帰率の強化と合わせて、重症患者の入院治療への集中が求められる。地域の病院には回復期機能と在宅支援機能を担うべく地域包括ケア病棟への誘導が図られ、「かかりつけ」機能強化として地域包括診療料・加算の見直しや「かかりつけ」薬剤師、薬局の評価が新設された。門前薬局は報酬を下げると断言されている。在宅に関して言えば、「かかりつけ」との連携が色濃く打ち出されている。居宅における重症患者診療などの評価、在宅専門診療所の公認に伴う施設要件などが注目される。

 ポイントとなって来るのは、急性期などの病院は紹介による入院患者獲得、在宅復帰機能(退院支援)強化を強く迫られるということ。病床稼働率維持が至上命令となる。地域連携に病院側も診療所側も積極的に取り組んでいかなければならない。一方、「かかりつけ」機能強化は一気には進まないだろう。認知症ケアと小児が焦点になりそうである。

 在宅は「かかりつけ」機能との連携を考えていかなければならない。ただし超高齢化に伴う疾患の複雑化、24時間対応の必要性を考えれば、グループ化は避けられない。急性期は10対1看護配置もデータ提出が義務付けられてハードルが高くなった。地域の中小病院は「かかりつけ」機能を支える役割・機能を要求されていると解釈される。

 「地域包括ケアシステム」は在宅医療と多職種連携と地域コミュニティとの連携が課題となる。地域中小病院も参加した「かかりつけ」機能を担う医療機関、介護事業者の役割が重要化すると思われる。2018年診療報酬・介護報酬同時改定が大きめ節目となるだろう。そのための準備に今から取り掛かるべきというメッセージが、今回の改定から読み取れると考えたい。

ポイントをまとめると、下記のようになるだろう。
1.7対1看護配置など急性期は重症患者への重点移行を求められ、さらに在宅復帰機能
強化を迫られる。病病・病診など連携強化の動きが課題となる。
2.地域の中小病院などは在宅復帰支援と在宅支援の機能強化により、地域包括ケアシステムの要の役割を果たすことが期待されている。地域包括ケア病棟と地域包括診療料を考えたい。
3.診療所は、「かかりつけ」薬剤師、薬局や歯科との連携による「かかりつけ」機能を充実させていくことを考えなければならない。認知症ケア、小児が重点となってくる可能性が高い。
4.在宅医療は、「かかりつけ」と連携した形での展開が必須となっていく。施設系在宅の復権はない。

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