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コラム
 
地域とつながる、地域に参加する−病院の開設する地域交流拠点の意味
メディサイト 松村 眞吾

 最近、病院の開設した地域交流拠点を幾つか取材してきた。地域包括ケアシステムの 構築が言われる中で、行政も医療関係者も介護福祉関係者も、地域の住民「啓発」に悩んでいる。特に医療関係者は住民の意識をどうやって喚起するかについて、戸惑いと悩みが 目立つ。そんな中、地域の病院での取組みが注目される。

 共通するのは、日常的に病気のことを考えている住民は(当事者を除けば)ほとんどいないということを認識したということである。要するに地域住民は特定の健康問題などには興味がなく、偉い先生の話など聴く気もないということを知ったということである。

 これらの交流拠点では各種体操教室や体に良いとされる料理教室、ランチ会、相談会 など健康づくりに関するイベント開催もあるが、ヨガ教室、子育てイベント、英会話教室、読書サークル、喫茶店代わりの利用など、直接的には健康と関係のないイベントや使われ方も多い。特に目立つのが、子どもらの利用で、子ども食堂開催もあるが、単に宿題をやる子どもらの溜まり場となっているところもある。

 地域包括ケアを実践する交流拠点が高齢者の医療介護ためのものだと考えるのは、まさに関係者だけだと言って良い。地域の普通の人々が集う仕掛けがなければ、来て欲しい高齢者も来ない。地域とつながるとは、地域住民一般とつながるということである。  近江商人は「三方良し」の精神で知られる。「売り手良し、買い手良し、世間良し」である。売り手と買い手だけではなく、世間にとって良い、そういう商いこそが商いだと 言う。病院でも同じことではないか。医療者と患者だけが関係者ではないし、集患増患と言うが、地域社会に貢献してこそ、つながってこその病院である。「世間良し」を考えなければ地域包括ケアなど絵に描いた餅であるし、健康に関係する、しないにかかわらず、生活ベースで交流を図っていかなければ地域住民とつながるものではない。住民啓発ではなく、地域に入っていくことが必要なのである。そのためには「用事」がある人だけが来るような 仕掛けでは意味がない。

 カッチリしたものを考えるのではなく、ゆるやかに地域同士につながってもらう。地域にネットワークができれば、実は病院経営も向上する。マーケティング的には、実は検証済みの策である。

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