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コラム
 
フランス「在宅入院」制度を視察して
メディサイト 松村 眞吾

 フランスの医療制度は日本に似ている、とされていたが、今やかかりつけ医登録制度が根付き、かかりつけ医を通さないと保険診療自己負担(窓口負担)7割となっている。フリーアクセスは、事実上なくなった。
 病床削減が強制的に進み、入院は減っていかざるを得なくなっている。「在宅入院」制度はよく考えられた制度と思う。高齢対応というより全世代の退院促進の仕組みである、と説明された。まさに病棟並みに住居に機器を持ち込み、入院水準の医療を提供する。だから「在宅入院」ということになる。日本の在宅医療と根本的に違う。本当の重症者に限定されている。がん化学療法、終末期、手のかかる医療処置(長時間に亘るガーゼ交換)など。参入を促すためにハードルを下げてきた日本の在宅医療は正しかったのか?
 対象患者の半数が健康相談などの軽症者だが、今後、制限を加えていくのか?できるのか?

 もちろん狭間に落ちて、入院も在宅医療も受けられない患者の存在はありそうだが、大きな枠組みを考えるとフランスの「在宅入院」の妥当性はうなずける。
 HADというコーディネート組織の存在も大きい。コーディネート医師、看護師(大手でスタッフの半分は看護師)、薬剤師らが在籍し、訪問診療を行うかかりつけ医へのバックアップ、必要度の高い患者への看護提供、抗がん剤など調合と点滴などを行なう。必要に応じ外部関係者との連携も行なう。特筆すべきはHADによるかかりつけ医の在宅バックアップと多職種連携のコーディネート、薬剤関係だろう。日本ではHADの機能を医師会に持たせようとしている、と感じるのだが(在宅医療・介護連携支援センター事業)、上手くいくだろうか?

 crazy-busyな医師や看護師が引っ張って行っている日本の在宅医療だが、HADのような組織がなければ、かかりつけ医による在宅は進んでいかないと思う。HADのような仕組みを民間で考え具体化すべきなのだろうか。
 フランスの高齢化率はまだ18%かつ出生率も高い。だが、備えは進んでいる。日本は抜本的な見直しが必要な時期にあると言える。働き方改革が待ったなし、医療費財政も限界、となれば、形ではなく実質を学び導入していかなければならない、と考えさせられた。

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